なぜ「パーム油」が問題に?パーム油が引き起こす環境・社会問題とは
こんにちは!衣食環境ブログのマイカです。
この記事では、近年問題視されるようになった「パーム油」についてお話していきます。
パーム油は、パンやお菓子、洗剤など私たちの生活に身近なものの原材料として使われています。
なぜパーム油が問題視されるようになったのでしょうか。また、私たちはパーム油を避けるべきなのでしょうか。
この記事は、
- パーム油ってなに?
- パーム油が引き起こす環境・社会問題って?
- 私たちはパーム油問題についてどう取り組めばいいの?
といった方におすすめの記事です。
ぜひ最後までご覧ください!
パーム油とは
パーム油(Palm Oil)とは、世界で一番多く使用されている植物油です。
パンやお菓子などの加工食品、洗剤、化粧品にも使われており、日本では誰もが毎日使っている油です。
また、パーム油の原料は「アブラヤシ」という植物で、高さ20mに成長した幹の先端になる果実からパーム油を作り出します。
もともと、アブラヤシは西アフリカが原産の植物ですが、世界でパーム油の需要が拡大したことからインドネシアやマレーシアを中心に栽培がおこなわれています。
パーム油の生産国
USDA「World Markets and Trade」によると、現在のパーム油の消費量は7万トンを超えています。
そして、その8割以上がインドネシアとマレーシアで作られています。
以下のグラフが、世界のパーム油の国別生産量です。(USDA「World Markets and Trade」のデータを元に作図)
2020年~2021年に作られたパーム油の59%がインドネシア、24%がマレーシアで作られていることが報告されています。
パーム油が世界で一番使用されている理由
パーム油は食品から日用品まで様々なものに使用されています。
なぜここまで幅広く使用されるのか。
その理由には、生産効率の高さと価格の安さ、汎用性の3つがあげられます。
パーム油は一年中収穫することができ、他の植物油に比べて小さい面積で大量に生産できることから低価格で取引されています。
そして、パーム油は酸化しづらく、様々な食感を出すことが可能なので多くの食品にも使われています。
「パーム油」問題って?
使い勝手がよく、私たちの日常にあふれているパーム油ですが、パーム油の生産国・生産方法が環境や社会問題を引き起こしていることが問題視されています。
特に、パーム油の生産が盛んなインドネシアやマレーシアの熱帯雨林がものすごく速いスピードで消滅していることが指摘されています。
パーム油が引き起こす環境・社会問題
パーム油問題は、地球温暖化や異常気象にも関係があると言われています。
そんなパーム油に関する環境問題、社会問題についてそれぞれ詳しくお話していきます。
環境問題
環境問題は、以下の3つを取り上げてお話します。
- 熱帯雨林の減少
- 泥炭地への火入れ
- 野生動物の減少
1.熱帯雨林の減少
パーム油の原料であるアブラヤシは、もともと熱帯地域原産の植物であるため、栽培するには高温多湿な気候と長い日照時間が必要になります。
この条件に当てはまる地域は限られており、赤道付近の熱帯地域、すなわち東南アジアやアフリカの地域に限られます。
そして1848年、インドネシアにアブラヤシの原木が持ち込まれてから、東南アジア地域を中心に大規模栽培が広がっていき、今ではインドネシアとマレーシアを中心に栽培がおこなわれています。
インドネシアとマレーシアで栽培が広がると同時に、農地開拓のための森林伐採も広がりました。
日本の1.25倍の面積があるインドネシアのスマトラ島では、1985年に陸地面積の58%を占めていた森林が2016年には24%にまで減少していることが発表されています。
また、ボルネオ島でも島の面積の約3分の1の森林がなくなっていることが報告されています。
インドネシアやマレーシアは、世界の中でも豊かな熱帯雨林が広がっている国です。
しかし、パーム油の生産量を増やすために多くの熱帯雨林が切り倒され、アブラヤシの農地に変わりました。
2.泥炭地への火入れ
泥炭地とは、枯れた植物などが分解されずに堆積した土地のことです。
泥炭地は地球の陸地の約3%ほどしかありませんが、世界中の森林よりも多くの炭素を貯えています。
しかし、この泥炭地も農地をつくるために開発されつつあります。
泥炭地に直接、アブラヤシを植えることはできないため、農地にするには一度燃やさなければいけません。
炭素を多く含んでいる泥炭地を燃やすと、地球温暖化の原因である二酸化炭素が大量に空気中に広がります。
自然を破壊するだけでなく、地球温暖化も加速させてしまうのです。
3.野生動物の減少
森林を破壊され、住みかを失った野生動物たちへも影響を及ぼしています。
もともと、熱帯雨林は生態系が豊かで多くの絶滅危惧種の動物たちが生息しています。
特に現在、ボルネオ島とスマトラ島にしか生息していないオラウータンの減少が問題となっています。
住みかを失ったオラウータンがアブラヤシ農園に入り、人と衝突する事故や害獣として扱われ殺されたりと、動物への被害もあとを絶ちません。
社会問題
社会問題は2つ取り上げてお話します。
- 先住民族への被害
- 労働問題
1.先住民族への被害
インドネシアは1万4,000以上の島からなる国で、その中には800以上の言語と1,000以上の民族が混在していると言われています。
また、AMAN(インドネシア先住民族の連盟体)の概算によると、インドネシアの先住民族の総人口は少なくとも5千万人であることが報告されており、多様な先住民族が暮らしているインドネシアでは、森の中で暮らす先住民族や森の資源を利用して生きている人々がいます。
アブラヤシ農地の開発で森林を失って困るのは、動物だけでなく人間も同じです。
2.労働問題
アブラヤシ農園の劣悪な労働環境や児童労働も問題となっています。
アムスティ・インターナショナルによると、
- 移民のパスポートを取り上げて無給で働かせる
- 妊婦が危険な農薬散布を行っている
- 8歳の子どもに労働をさせる
などの問題が報告されています。
※児童労働問題については以下の記事で詳しく書いているので、ぜひ参考にしてください。
パーム油は避けるべきなのか
私たちの日常にあふれていながらも様々な問題を抱えている「パーム油」を避けるべきなのか。
パーム油問題について指摘している誰もが口をそろえて「必要以上に避ける必要はない」と言っています。
パーム油が問題視されている点は、消費者ではなく生産者、生産方法であることから消費者が避けるべき必要はないそう。
実際にパーム油の生産効率の高さは、人口増加に伴い需要が増していくことが考えられます。
他の植物油でパーム油と同じ量を生産しようとすると何倍もの農地面積が必要になることから、さらなる森林破壊が生まれる可能性があります。
パーム油の作り方を変えていくことが、持続可能な社会にしていくために必要なことです。
※人口爆発については以下の記事で書いてるので、ぜひ参考にしてください。
私たち消費者にできること
パーム油の問題点は生産方法にあると言いましたが、私たちに全く関係のないことではありません。
生産方法を変えていくためには、消費者の選択が重要になります。
持続可能なパーム油の生産を広げるため、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)という国際組織が設立されました。
RSPOが策定した認証制度で、生産にまつわる様々な場面で160もの基準があり、その基準をクリアした製品にのみ、ヤシの木をオマージュした認証マークが付けられています。
私たち消費者はこの認証マークがついている製品を選ぶことでパーム油問題に貢献することができます。
認証マークがついている商品を選ぶことのメリットは、持続可能な形で生産している農家を応援するだけではありません。
認証制度を利用していない農家が「認証を受けないと売れない」という焦りから、認証を取得するために持続可能な生産方法になる→持続可能な生産を行う農家が増えるという良い循環が生まれます。
この循環を生み出すためにも、私たち消費者の商品の選び方が重要になります。
まとめ
パーム油問題についてお話しました。いかがだったでしょうか?
私たちの身近にあるものが、実は環境破壊に繋がっているということはよくあります。
現代の人間の暮らしは、必ず環境に負荷をかけてしまっていることは事実で、環境に全く負荷をかけずに暮らすことはできないと思っています。
しかし、できないとはわかっていても少しでも環境に優しく、地球に優しく暮らしていきたいなと思います。
そのためには、商品の選び方や移動手段、ゴミの量を抑えるなどできることを少しでも始めていきたいですね。
最後までご覧いただきありがとうございました!